「下町ロケット」は特許法を誤認させるもの

 TBS日曜劇場で放送したドラマ「下町ロケット」は、2018年12月23日に最終話、続いて2019年1月2日に特別編が放送された。最終話では佃製作所製のトランスミッションの耐久性の問題が発覚し、シャフトの構造を変更して新しくすることで問題をクリアし、佃社長から、「特許申請しておこう。」と言われる。その頃、ライバル会社のギアゴースト社製のトランスミッションも同じ設計者の手によるもので改良前の佃製作所製のトランスミッションと同じ耐久性の問題が潜み、それに起因する問題が自動トラクラー・ダーウィンにも出だしていた。その後の最終話では、このギアゴースト社製のトランスミッションの問題の原因が突き止められ、それを解決する技術は佃製作所により特許化されていたというストーリである。ドラマではこの佃製作所製のトランスミッションの耐久性の問題解決からギアゴースト社が自社製のトランスミッションの問題で自動トラクラー・ダーウィンの事業から撤退せざるを得ない窮地に陥るまでは数か月、その年の間に起こった短期間の間の物語であったはずだ。しかし、そんな短期間で特許が登録されることは有り得ないことである。
 特許は特許法に基づいている。特許は申請して18ヶ月間は公開されない。特許申請時には関連技術や先行技術を検索して、記載することが義務づけられている。しかし、申請後、18ヶ月間は公開されないために、この期間に申請された特許に同一の技術があっても知る由もない。特許申請後に審査請求しても、この間に申請された特許が公開されないと特許登録されることはない。したがって、ドラマにあった佃製作所が登録したトランスミッションのシャフトの構造に関する特許は18ヶ月以上経った後のことである。「下町ロケット」の最終話と特別編とはそんなに年月が経った間のことではなく、差し迫った短い間のことであった。
 技術といったら特許。一般受けするのだが、「下町ロケット」の特別編では日本の特許制度を無視したストーリとなってしまった。別に特許登録前、特許公開広報が出る前であろうと、そこに記載された技術内容は出願社(ドラマでは佃製作所)に存在し、それを他社(ドラマではライバル会社のギアゴースト社)に提供することは可能であるはずだ。ただし、特許申請直前の18ヶ月間に同一の技術内容の特許が他社(や別の発明者)から出願されていなかったなら、特許登録の可能性が高くなり、特許登録することができる。
 原作者の池井戸潤氏なのか、脚本家(誰?)なのかは不明であるが、特許制度の常識を無視した物語はいくらフィクションだとはいえ、問題がある。また、クボタも監修したとあるが、こうした点を善意であれ、故意であれ見落としてしまっていることも驚きである。視聴者に特許に対する誤った知識(、特許出願したら直ぐに登録される)を植え付けるものであり、ひいては、日本が技術後進国への下り坂を転げ落ちてしまう(、しまった)要因にもなろうか。誤ったことを伝えること(例えば、「下町ロケット」の特許の件)と、事実を伝えないこと(、例えば、ケータイは日本発祥の技術で、それが世界のデファクトとなった事実(https://4travel.jp/travelogue/11422827)など)が技術立国であった日本をそうではなくしてしまっている。

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